G-HOUSE / House in newtown / 2007
House in newtown / ニュータウンの住宅について
反復する風景のインパクト。
形骸化した造成地。
ぽっかりと浮かぶ空っぽの空間。
僕が大学の学部2年生の頃(2001)、住宅設計課題で当時の担当教員だった西沢立衛さんが「ニュータウンの住宅」という課題を出題していた。ニュータウン、というノーコンテクストとも言える場所のコンテクストをどのように捉えるかという、今思えば、それ2年生に出題します?という難易度である。ニュータウンの問題が取り上げられるときはたいてい、将来的な人口減少やそれに伴う空き家の増加、職住近接型のライフスタイルへの対応といった、社会学的、都市計画的な視点で語られる。ではしかし、カタチ、あるいは空間形式としてはどう応えるべきなんだろう。そもそも新たにつくる必要はあるのだろうか。答えの見つからない問いに対して、もやもやと悩んでいた。
やがてこのG-houseの設計を行うことになり、敷地と対峙したとき、2年生の住宅課題の続きが始まったような気がして、その頃のもやもやが蘇ってきたのであった。1970年代に開発されたニュータウンの住宅の老朽化が進み、住み手も次の世代に移行する過程であったこの場所に対して、そこを更地にして無批判に新しいものを建てることには抵抗を感じていた。ニュータウンの住宅の建て替えは今後あちこちで起こってくることなのだから、つくることと同時に、多かれ少なかれ何かを「変え」て、なんでもなかった日常の風景の中から、新しい価値を提示すべきだと思った。まずは慣習と前提を疑うことから始める。
2007年当時の作品解説文(「新しい風景をつくる」JT 2007/11掲載)にはこう書いてある。
「この土地の形状とレベルはもともとオリジナルに存在したものではなく、建物を効率よく建てるために人為的につくられたグラウンドである。このグラウンドの上にある限り、どのような建築をつくっても、建築と周辺環境の関係がニュータウンの形式の中に回収されてしまうと感じた。そこでわれわれは土地を建築化することを試みた。(中略)ニュータウンで感じるすべてがお膳立てされた、どこかフィクショナルなコンテクストの中に、住処を自らの手で発掘するように空間を削りだす。これは一見あたりまえに存在している「擁壁に保持された台座の上に家が建つ」という前提条件を「前面道路と同じレベルの地下空間をもつ」と読み換えることで、単一的なニュータウンに、新しいグラウンドレベルを創出することにほかならない。この新しいグラウンドレベルの空間は、コンクリートの擁壁によって、周りの環境から少し距離を取ることができ、だからこそ周囲に対して積極的に開くことが可能となる。半地下の生活空間は「ナナメノニワ」を介して周りの環境と連続する、伸びやかなインテリアとなった」
開発当初は不可侵な前提条件であった擁壁と造成地を既存建築と捉えて、敷地のリノベーションを行うという解答を与えている。多少余計な費用はかかるものの、造成地を地下空間にするだけで、通りとの連続性も生まれ、大きな気積を持つ空間も得られる。確かに基壇の上をGLとして計画すると、中央配置で2階建てのヴォリュームにならざるを得ないエンヴェロップが法規から導かれてしまうので、擁壁内を総掘りし内部空間化することは、階高やプランの自由度を高める設計手法としても非常に有効に思えるし、この形式は開放的な(みんなが使える)ものになるはずだ。
家型にすることにこだわったのは、延々と続くリピテーションの中に同じようなヴォリュームを置きつつも、周囲の住宅とは全く異なる内部空間が存在していることを強調したかったからだが、上部構造については、違ったカタチもありえたかなと、今では思う。(200218_mh)
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名称G-house
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用途専用住宅
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所在地横浜市, 神奈川県
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設計釜萢誠司+針谷將史
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庭城戸崎和佐
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構造オーク構造設計/新谷眞人 梅澤由香里
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設備
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電気大瀧設備設計事務所/大瀧牧世
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施工
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家具
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構造・規模S造/地下1階, 地上2階
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敷地面積309.57㎡
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建築面積68.10㎡
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延床面積182.57㎡
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掲載
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Architectural Review Magazine 2007, No.1330
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日経アーキテクチュア2008年1月号
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Casa BRUTUS 2008年2月号
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dwell 2008.5
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Architecture NOW Houses 1
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100 Contemporary Houses
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受賞INAX快適住宅コンテスト 審査員特別賞
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AR awards for Emerging Aarchitecture COMMENDED賞
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吉岡賞(2007)ショートリスト
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撮影