KURURU / 2019

Kururu / 地域の建築を考える

民主的な建築がつくれないだろうか。
小分けにされた部屋に各々が閉じこもるのではなく、
衝突と寛容とを繰り返しながら、誰もが参加できるひとつの空間を、能動的に使う。
大都市と同じような、匿名性をもった居場所が欲しい。
「温かい」みんなの家ではなくて、一人ひとり違った居場所があっていいはずだ。
それは神社のように、開かれた存在であってほしい。
これからの、地域(中間的スケールのネイバーフッド)の公共建築を考える。
(200301_mh)

開放的な都市のインフラ

「地域交流センター」を構成するプログラムや規模は、その地域ごとに異なり、決まったビルディングタイプというものは存在しない。那須エリアは農作や酪農が特色で、食に関する人びとの意識も高く、今回のプロジェクトには、「人と食を育む交流の家」というテーマが与えられていた。フードコートやシェアキッチン、コンサートのためのステージや音楽室、多目的に使える和室や工作室、非日常的な利用としてのお祭り広場、などの機能が求められたが、それ以上に室名に還元できない多くの活動が想定された。ここでは、定型化されたサービスのための、室の集積としての「施設」ではなく、能動的な市民活動の場がせめぎ合い、目的を持たずに訪れる人びとの居場所にもなる、多中心の広場のような建築のあり方がふさわしいと考えた。

重視したのは、外部・半外部を含めて、全体がひと繋がりの空間として感じられること、空間のスケールが多様であること、である。ひとつの空間が状況に応じて様々な使い方ができ、同時に複数の団体や個人が利用していても、適度な距離感を保つことができる。構成は、敷地中央に長さ約50m の大屋根を、隣地側は天井を低く抑えたカテナリーの屋根を架けて大小の空間を一体化させるというシンプルなものだが、短辺方向の水平力を負担する構造をバットレスのように両翼に担わせることで、長辺方向における内外の連続性が強まり、来訪者を受け入れる大きな構えと、街路から連続する道のような雰囲気をつくっている。

柱には480 ×100mm という特徴的なスケールの長方形断面の鉄骨ビルトボックスを採用した。向きの異なる33 本の柱が林立することで空間に方向性が生まれ、構造自体が居場所の拠り所となる。高さ6m の大屋根下では、建築物の天井としての意識が希薄になり、まるで都市の広場を使いこなすかのように、各々が自由に過ごしている。あらゆる属性の人びとがアクセス可能な、開放的な都市のインフラとしての建築である。

(新建築2019 年11 月号掲載 一部修正_mh)